大好きな映画。レディ・バード
高校生のとき、自分は卒業したら絶対に東京に行くんだと信じて疑わなかった。
そのために必死に勉強したし、東京という、なんでもありそうで実は何にもない街に、とてつもなく大きな期待を抱いていた。
今私がいる場所は、本来私がいるべき場所じゃない。別に私は何者でもないけど、東京なら何者かになれるのかもしれない。
そんな幻想を抱いていた当時の私が、この作品、レディ・バードの主人公だった。
よく映画の宣伝文句に「これは、あなたの物語。」みたいなのってあるけど、たいてい全然私の物語じゃなかったりする。
だけどレディ・バードは、紛れもなく私の物語で、私だった。
2002年、カリフォルニア州サクラメントに住む高校生・クリスティン。彼女は自分の本名を嫌い、そのかわりに「レディ・バード」と名乗る。つまらない地元を早く抜け出したくて、高校卒業後はニューヨークに進学することを夢見ているけど、金銭的には厳しい。親には地元で奨学金を借りれるところに進学してほしいと言われるけど、もちろん聞く耳なんて持つわけがない。そんな閉塞的で複雑な家庭環境に嫌気がさして憧れの男の子と仲良くなるために背伸びしてみたり、自分のことを理解してくれない母親と喧嘩してみたり、でもすぐ仲直りしたり。等身大のレディ・バードの、高校生活最後の1年間の物語。
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まず、この作品はあのグレタ・ガーウィグがメガホンを取っており、サクラメント出身の彼女は2002年当時高校生だった。つまり、この作品は彼女の自伝的要素が多く含まれている。
「フランシス・ハ」(いずれこの作品も紹介したい!)を見てから彼女の虜の私はそれを知った時、「え、てことは私、あのグレタと同じような高校生活送ってたってこと?さすがじゃん...」って嬉しくなったりもしたけど、この作品がめちゃくちゃ評価されていることを考えると、たぶんみんなある程度共感してるんだと思う。残念。
その"みんながある程度共感できる思春期特有の葛藤"を抱えるレディ・バードだけど、彼女はこの1年を通して大きく成長することになる。今まで目を逸らしてきた現実と、同時に打ち砕かれる幻想。その上で手に入れた、見慣れているようで全く新しい景色を眺めた時の表情は圧巻。
なんでもない田舎町として描かれていたはずのサクラメントが、どうしようもなく綺麗で素敵な街に見えてしまうラストには思わず涙。
思春期を経験したすべての大人に捧げたい一本。
ちなみに憧れの男子・カイルを演じるのはティモシー・シャラメなんだけど、普通ティモシー・シャラメが住んでいる土地を離れたいと思うか?その点だけはレディ・バードとわかり合えない。