きゅんってする映画。ナイト・オン・ザ・プラネット
突然だけど、あなたはタクシードライバーと会話する派ですか?
それとも、一切しない派?
私はどちらかというとしない派。
全くの他人(しかもだいたいおじさん)と車内で2人きりだし、話題だって大してあるわけじゃないから、積極的にコミュニケーションとろうなんて思わないよね。
まあ、あなたが話す派にせよ話さない派にせよ、これから紹介する作品「ナイト・オン・ザ・プラネット」は、そんなありきたりなタクシーの車内を描いた作品。
1991年、スマホのない時代。手持ち無沙汰なのは煙草でごまかす時代。舞台はロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキ。5つの異なる土地で、同じ日の夜にタクシーに乗った乗客とドライバーのやり取りだけを切り取ったオムニバスストーリー。
整備士を夢見る若き運転手×ビバリーヒルズに住む金持ちスカウトマン
カタコトの英語を話すドイツ人運転手×ブルックリンに住む黒人青年
コートジボワール移民の運転手×盲目の女性
おしゃべり達者(うるさいほど)のおじさん運転手×神父
寡黙な運転手×酔っ払いおやじ3人組
どこが舞台でもそれぞれのコミュニケーションの形があって、タクシーに乗っているほんの20分ほどのやりとりなのにそれぞれのバックグラウンドが手にとるようにわかる。
そして、ふつうならきっと一生交わることのないであろう世界に住む二人が、その瞬間だけ通じ合う。その通じ合っちゃう感じや、逆に噛み合ってないやり取りにも、なんとも言えずきゅんとする。恋愛のきゅんじゃなくて、ほっこりする方のきゅん。
どのキャラクターも、客を乗せるまで、タクシーに乗るまでは予想もしていなかっただろう出会いから起こる小さな出来事ぜんぶが愛おしく感じてしまう。ちょっと笑えたり、優しい気持ちになったり、イラッとしたり。
私はこの映画を見終わったあとすぐに乗ったタクシーで、さっそく運転手のおっちゃんとおしゃべりしちゃった。話題はコロナとオリンピックというザ・世間話だったけど、そんな会話も楽しもうとすればそれなりにいいもんだなあと思えた。
そんなただの日常を特別に感じさせてくれる映画っていいよね。
夜が舞台の映画だから、夏の夜にゆったり見てほしい。
そして見終わった後は、どのエピソードが好きだった?なんて話すのも楽しい。
ちなみに私のお気に入りはニューヨーク。今まで見た映画の中でも上位に食い込むくらいに好き。
ニューヨークに出てくる2人。帽子がたまたまお揃いだ!ってなるシーン。(なんで後部座席じゃなくて助手席に座ってるの?って思った人は本編を見てね。最高だよ。)
はっきり言って、この映画の監督ジム・ジャームッシュの映画って退屈だ。
退屈だって言い切ってしまうと語弊があるけど、お洒落なんだけどなんだか眠たくなりそうな雰囲気の作品が多くて、家で見たら確実に寝ちゃう!と避けていたんだけど。
そんな中始まった「ジム・ジャームッシュ レトロスペクティブ2021」(都内のミニシアターでジム・ジャームッシュ監督の過去12作品特集上映)が、私にとって彼の作品を見る大きなチャンスだった。企画してくれた人ありがとう!
上映館も徐々に増えてるし、U-NEXTでも見られるのでぜひ!
私もこの夏の間にもう1回は見返す予定。