人生の話。LIFE!

 


ずっと、大人になんてなりたくないって思っていた。
23歳になった今でも、心は18歳で止まっているし、未だに大人にはなりたくないと思っている。

だって大人になるっていうことは、社会の縮図の一部になって、わがままばかり言ってられないし、本音と建前とか、責任感とか重圧とか、よくわからないけど大変そうだから。
まず働きたくないし。
一生大学生でいたいよね。
 
 

これから紹介する映画「LIFE!」の主人公・ウォルターだって、そんな社会に揉まれてつまらなくなってしまった大人のうちの1人なのだと、物語の冒頭ではそう決めつけていた。
 
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出版社の写真管理部で働くウォルターは、毎日ただ与えられた仕事をこなすだけの地味な独身男。意中の女性にアタックできないだけじゃなく、婚活サイトさえ満足に使えいこなせない。そのくせ趣味は空想で、頭の中で繰り広げるありえない世界にのめり込んで日々をやり過ごしている。
 

私が思い描く"こんな大人にはなりたくない"ランキング堂々の一位、”つまらなくてかっこ悪い大人”そのものである。
 
 
しかしある日突然、ウォルターが長年携わっていた雑誌「LIFE」の廃刊が決まる。外部のコンサルタントの指導でオンライン化が決まり、ウォルターが管理していた写真のネガも、もう必要なくなる。
 

そんなウォルターの長年の集大成である終刊号の表紙は、撮影したカメラマン曰く「LIFEの真髄」らしい。ウォルターはいち早くその写真のチェックに取りかかろうとするけど、なぜかその写真"25番"のネガだけが、どこにも見当たらない。そんなことが上司に知れたら自分の首が飛ぶこと間違いなしのウォルターは、25番の在り処を尋ねようとカメラマンに接触を図ろうとするが、誰もそのカメラマンの居場所を知らなかった。それもそのはず、そのカメラマン・ショーンは世界中を飛び回り危険を顧みない撮影スタイルで有名なのだ。ウォルターは自分の最後の職務を全うするため、どこにいるのか見当もつかないショーンを探しに、アメリカを飛び出して未知なる冒険をはじめる。
 
 
 
 

冒頭のウォルターは、紛れもなくつまらない男だった。会社にいても空想ばかりしていて、その中でだけ自分自身でいられる典型的な冴えない男。そんな冴えない男が、なぜ国を飛び出してまで表紙のネガを手に入れたいのか。その原動力がいまいちよくわからないまま物語は進んでいく。
 
 
道中に訪れるグリーンランドアイスランド、そしてアフガニスタン。それぞれの土地でウォルターが出会う人たちはみんな温かくてチャーミングで、一期一会という言葉がぴったり。そしてそんなキャラクターたちと同じくらい素晴らしい絶景は、全部行ってみたい!とうっとりしてしまうほど。
 
 
景色だけじゃなくて、この行き当たりばったりな旅の中でウォルターが見つけるのは、得意の空想を通り越した規模の壮大な経験と、美しい人生の奇跡たち。さまざまな体験を通して成長していくウォルターがどんどんかっこよく見えて、見終わる頃には、ウォルターみたいになれるなら大人になるのも悪いもんじゃないのかもって思わされてるからすごい。
 
 
この映画はストーリー自体もすっごく面白いんだけど、コロナ禍で海外旅行に行けない今だからこそ楽しめる。躊躇なくすぐ海外にぶっ飛んじゃうウォルターを見てるだけでストレス発散になるから。
 
 
何度目かすら忘れた緊急事態宣言下の夏、クーラーガンガンの部屋でプロジェクターに映して見てみてほしい。面白さは私とベン・スティラーが保証するから、後悔はさせないよ。
 
 
 
 
 
そしてなによりも、ウォルターが勤めるLIFE誌の社訓が好き。
 
To see the world, things dangerous to come to, to see behind walls, draw closer, to find each other, and to feel. That is the purpose of life. 
 
" 世界を見よう。危険にも立ち向かおう。壁の裏側を見に行こう。もっとお互いを知って、感じよう。それが人生の目的だから。 " 
 
 
本当はもっと語りたいシーンや好きなセリフがたくさんあるんだけど、全部ネタバレになっちゃいそうだから我慢。